こんにちは
湖面をたゆたう漫画好きLuckoです
このブログではいい年した漫画好き(汗)の私が、これまでの漫画遍歴で好きだった漫画や作家さんの作品を中心にあらすじやキャラクターを簡単に紹介しつつレビューしていきます
完全に個人の独断と偏見ですのでその辺はご容赦ください
あとネタバレも含みますので注意してくださいね
今回ご紹介するのは黒丸「東京サラダボウル-国際捜査事件簿-」です
この作品の作者・黒丸先生と言えば「クロサギ」が有名ですよね
ドラマ化や映画化された後に執筆したのがこの「東京サラダボウル」です
以前当ブログでも取り扱っていましたがこの度完結したとのことで読み直してみました
・・・黒丸先生って女性だったんですね~
そう言われるとキャラクターのタッチとかテーマとか緻密な内容がなるほどと思う部分が多々ありますね
作品概要
【作品名】 |
東京サラダボウル-国際捜査事件簿- |
【作者】 |
黒丸 |
【連載期間】 |
2021〜2024 |
【巻数】 |
全5巻 |
【掲載誌】 |
Palcy(パルシィ) |
作品紹介
■ジャンル
この作品のジャンルは主に「警察」での職務や「社会問題」をテーマに描かれています
主人公は男女ですが単純に恋愛とかではなく「仕事」として人間としての信頼で繋がっていく感じですね
その伏線も物語の根幹に含まれています
■メインキャラクター
「有木野了(ありきの りょう)」
元警察官で現在は「警察通訳人」として活動している
鴻田には「アリキーノ」と呼ばれている
「鴻田麻里(こうだ まり)」
国際捜査係の刑事、緑色の髪と突飛な行動で部署の人間からは煙たがられている
■警察通訳人と国際捜査係
有木野の職業は「警察通訳人」というもので内容としてはその名の通り警察が色々な事情で身柄を拘束した外国人の通訳をする仕事です
警視庁の中では「警視庁教養課通訳センター」って所が仕事場です
有木野は日中英の3か国語を操りその通訳はまるでダイレクトに話をしている錯覚に陥るくらいスムーズなものです
ふむ、通訳としてはかなり優秀なクチみたいですね
鴻田は警察の中で「国際捜査係」という部署に所属しています
本来国際犯罪と言えば密輸、窃盗団、犯罪インフラなど大規模な犯罪がメインとなるのに彼女は外国人の小さな相談事の解決ばかりに腐心しているのが関係しています
もちろん犯罪の大小で態度を変えちゃ駄目ですけど普通刑事って大きいヤマをやりたそうなものですけどね
なので鴻田は警察内でも変わり者扱いされています
有木野はとある過去の事件に関わった事で警察内部から嫌われています
そして鴻田はその見た目と行動で組織から煙たがられています
嫌われ者とはぐれ者
変わり種の2人が出会う事でどんな化学反応が起きるのでしょうか?
■事件の中心は外国人
2人の仕事に関わる加害者や被害者は殆どが外国人です
有木野が中国語を話せるのでストーリーは主に中国人が関係するトラブルを中心に描かれています
序盤には中国人旅行者の失踪や中国人幼児の誘拐事件、ベトナム人万引きグループの捜査などが行われます
このように日本人が気付かないだけで外国人犯罪というのはありとあらゆる所で起こっており、我々の生活とも密接しています
作中の紹介では東京都の外国人居住者の割合はわずか3.98%
しかしそれを人数に換算すると55万人になります
東京は外国人の坩堝、さしずめ「サラダボウル」なんです(ハイ!タイトル回収!)
有木野の仕事に求められるのは「直訳」ではなく「意訳」
主観を持たず相手が伝えたい言葉を「伝わるように話す」
これ簡単なようで難しいですよね
同じ日本人で言葉が通じない輩がいるのに(笑)
鴻田の仕事でも日本人の枠組みではなく外国人の立場や視点で考えた操作が必要になって来ます
あと日本人離れしたフランクな対人能力(=馴れ馴れしい)も役に立ちます
杓子定規な考え方では理解出来ない行動原理があるってのは確かですよね
■有木野の秘密
有木野は警察通訳人をする前は刑事でした
でも同期だった「八柳隆太(やなぎ りゅうた)」を始め刑事や警察組織からは超嫌われています
素朴な性格で鴻田と違いおかしな行動をするわけでもない・・というかかなり理性的なタイプな有木野はなぜ嫌われているのでしょうか?
ポイントは「警察組織」から嫌われているって所です
ご存知通り(?)警察は物凄い内輪の繋がりが強い組織です
一般人の事件はいい加減な操作をしても(決してそんな事はない!・・・はず)警察官が巻き込まれた事件は草の根分けてでも犯人を探し出します
その上内部の不正や問題は並々ならぬ組織力で外部に漏らしません(オイ・・・)
もうお分かりですね!(わかるのか??)
有木野は警察組織に嫌われる何かをしてしまったんです(だから何??)
■ボランティア
この物語の中でもう一つ重要な位置を占めるのが「ボランティア」と呼ばれるブローカー組織の存在です
不正に取得した日本国籍を不法滞在者に流す戸籍売買を行っておりストーリー中でも度々その名前が登場します
中でも「黄(こう)」と呼ばれる謎の男はボランティアで大きな役割を果たしている日本人らしいという情報があり、ちょっとした外国人の諍いを超えた大きな事件の臭いを感じずにはいられません
■繋がる点と点
ラストエピソードに当たる話では先に述べた「有木野の過去」や「ボランティア」に関わる内容が語られます
キーパーソンとなるのは新しく鴻田のパートナーになったベテラン刑事「阿川博也(あがわ ひろや)」と有木野のかつての同僚「織田覚(おだ さとる)」
同じ部署で刑事をしていた織田は中国語が堪能で外国人のイザコザを上手く仲介する阿川の手腕を信頼していたが、ある事を境に彼の不合理な行動が目につき「ある疑惑」を抱き始めます
一方で織田は同僚だった有木野とも良好な関係を保っていたが3年前に起きた「非違事案」をきっかけに自殺してしまいます
鴻田は「ボランティア」の捜査を通して3年前に有木野・織田・阿川が関わった出来事の真相へと近づいて行きます
この辺はかなりサスペンス調でこれまでの能天気さとは違う鋭い直感と感性を持つ鴻田の一面が見られます
ずっとクールなキャラクターだった有木野の心の底に残ったままの後悔や人を食ったような阿川が抱えている秘密など濃密な人間ドラマへと展開して行きます
鴻田は有木野にとって最初は煩わしい存在でしたがどんな小さな事件にも正面から取り組み社会的弱者に寄り添う彼女を見て少しずつ有木野も認識を改めて行きます
立場や人種、そして性別などで「マイノリティ」となった人たちをフォーカスした社会ドラマの一面も魅力的な作品でした
個人的には序盤に幅を利かせていたゲテモノ料理がもっとたくさん出ると良かったんですが・・・(笑)
これにて「東京サラダボウル-国際捜査事件簿-」読了です!
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