第68回　地主「スーパーの裏でヤニ吸うふたり」を読む！

このブログではいい年した漫画好き（汗）の私が、これまでの漫画遍歴で好きだった漫画や作家さんの作品を中心にあらすじやキャラクターを簡単に紹介しつつレビューしていきます

完全に個人の独断と偏見ですのでその辺はご容赦ください

あとネタバレも含みますので注意してくださいね

今回ご紹介するのは地主「スーパーの裏でヤニ吸うふたり」です

この作品は発売日にパッケージ買いをしました
今日び「ヤニ」ってワードも珍しかったし、絵柄も好印象でしたがその後「次にくるマンガ大賞 2022」Webマンガ部門1位、「全国書店員が選んだおすすめコミック2023」4位、「出版社コミック担当が選んだおすすめコミック2023」1位、「第7回みんなが選ぶTSUTAYAコミック大賞」4位と2023年は快進撃な１年でした

派手な評価とは裏腹にスーパーの裏でひっそりとタバコを吸う日常っていうのが刺さりますよね
佐々木と田山さんの関係も恋愛感情に届かない程度の淡い者ですが、タバコから広がる会話で繋がっていく関係性みたいなのが非喫煙者としては良い物に見えてしまいます
・・・吸いませんけどね！

作品概要

【作品名】

スーパーの裏でヤニ吸うふたり

【作者】

地主

【連載期間】

2022〜

【巻数】

既刊５巻 （2024.7現在）

【掲載誌】

月刊ビッグガンガン

作品紹介

■ジャンル

この作品のジャンルは「日常」「仕事」とうっすーい「恋愛」ですね(笑)
テーマとなるのはタイトル通り「喫煙によるコミュニケーション」なのですが、主人公２人の仕事にまつわる日常の苦労やサラリーマンやパートタイマーの哀愁など煙をくゆらせながら語ってくれます

■メインキャラクター

「佐々木（ささき）」
ブラック企業に勤める冴えない中年男性
サビ残、休日出勤、連勤に次ぐ連勤、上司の不条理な叱責などなど現代の社畜サラリーマンを絵に描いたような男です（泣）

「山田（やまだ）さん」＆「田山（たやま）さん」
山田の方が本名で地元のスーパーでパートをしている女性
山田→超愛想が良く仕事も出来るパート従業員、２番レジ担当
田山（偽名）→ガッツリギャルでメイクやタバコなど似ても似つかない山田さんの素の姿、佐々木の夢を壊さぬよう偽名を名乗る

「後藤（ごとう）」
スーパーの店長で山田の裏表を知り尽くす人物、佐々木の存在が面白く泳がせている

■ヤニ友から始まる仲

ブラック社員佐々木の唯一の癒しは行きつけのスーパーの２番レジ担当「山田（やまだ）」さん
彼女の明るい接客を見るだけで一日の疲れが吹き飛んでしまいます
・・・まーまー怖いな(笑)
ある日、いつも通り山田さん目当てでスーパーに行くと残念ながら彼女の姿はレジにありませんでした
ガッカリ気分を紛らわそうとタバコを取り出しますが店の周辺は禁煙（チーン）
その時、謎の女性に誘われスーパーの従業員用喫煙所を案内されます



気兼ねしながらもタバコ吸いたさに負けた佐々木は「田山（たやま）」と名乗る女性と一緒にタバコを吸います
それなりに常連の佐々木ですら見覚えのない女の子でしたが、なぜか彼女は佐々木の事を良く知っていました



それもその筈、彼女の正体（？）は彼が愛して止まない山田さんなのです（ドーン）
愛想の良いレジ店員の山田さんのプライベートはガッツリギャルな今風女の子でした
・・・勝手に夢見過ぎたね(笑)・・



山田さんもいつも自分目当てでレジに並ぶキモいおっさんぐらいの認識(笑)でしたが、彼の言葉の端々からにじみ出る誠実な人柄に少しずつ興味を持ち始めます
佐々木もさすがに何回か顔を合わせていれば気付く・・・訳もなく、仕事のトラブルを相談したり機嫌の悪い彼女を宥めたりします

■哀愁漂う佐々木パート

佐々木の仕事パートはとにかく上司に怒られています
決して佐々木が仕事出来ないとかじゃなくブラック企業の管理職っていうのはいつも怒鳴ってるし、他の社員に見せつけるようにスケープゴートを叱る者です
・・・あまり気にしてなさそうですけどね(笑)



上司の圧に鈍感な佐々木でも普通に働くだけで体力と精神力をすり減らす日常の中で山田さんの存在だけが唯一の癒しなんです
そんな佐々木も大学時代には人並の恋愛も経験していますし、彼にタバコを教えた年上元カノの「遠野（とおの）」はもしかしたら将来登場しそうな気がしますね



佐々木は過去に仕事で大きなミスをして社内でもこっそり有名人（悪い意味で）みたいです
田山さんに背中を押されて昔の上司が退職するのを機に会いに行くエピソードがありましたが佐々木自身はその事を吹っ切れていないようですがその上司からは今も信頼されているようで彼の人となりがちょっとだけ伺えますね
同僚で苦楽を共にする「鈴木（すずき）」も普段は家族ファーストな人間ですが佐々木と飲みに行ったり風評被害から遠ざけたり彼の過去を知りながら気さくに接してくれる良い人です
良い人の周りには良い人が集まる・・かな？

■意外とカオスなスーパーの人間関係

山田さんは８年スーパーに勤めるベテランパートです
年齢は25歳と発覚！（ちなみに佐々木は46歳）



店長の後藤は山田さんと８年の付き合いで彼女を知り尽くした存在だけに語り足りないエピソードを沢山ストックしています
40代独身、漫画が趣味、休憩は車でとかトラブルで早出したり上がった後でクレーム対応したりと接客業経験者ならではの哀愁を漂わせます



青果チーフの「田畑（たばた）」くんは大人しすぎて引っ込み思案というナイーブ過ぎる男性社員
仕事は褒められてたんでそれなりに出来るみたいですが、なんせ対人恐怖症レベルですからね
２人以上人がいる場所には入っていけないそうです・・・大丈夫か？
そんな田畑くんはたまたま佐々木と一服する機会を得てその心の内を話すと良い人中年代表の佐々木は優しく彼を受け止めてくれます
しかも田畑くんの意中の人は後藤店長・・・ハードル高いな！



序盤から登場していた元気な従業員「前澤（まえざわ）チーフ（サービスカウンター担当）」やゆるふわ系なベテランレジ「大野（おおの）さん」も上手く話を盛り上げてくれます



更にスーパーに現れる犬「大五郎」の飼い主で人気漫画家の「西園（にしぞの）さん」も注目
彼女はアニメ化ドラマ化常連の人気作を抱える売れっ子作家さんです
後藤店長とも知り合いで彼女がいつも読んでいる漫画も西園さんの作品という大ファンぶり
その西園さんも佐々木と同じく「ある人」を目的にスーパーに通っていました
その人とは・・・・大野さんです！！



23年前に大野さんからかけられた言葉を今も支えにしているくらい・・・ハッ⁉という事は・・
「田畑（恋愛感情）→後藤店長（ファン）→西園（好意・敬意）→大野さん」という図式が成り立ちます！（なんの図式だ？）

■未だ謎な過去の記憶

作中でスーパーの仕事を始めたばかりの山田さんに声を掛けてくれた男性がいるのですが・・・どう見ても佐々木っぽいんですがお互いの時系列では噛み合っていないんですよね
山田さんはその男性のお陰で仕事を続けて来れたという感謝の気持ちがあり、もしこれが佐々木だったら相思相愛ですよね！



というか既に相思相愛なりかけてますけどね(笑)
他愛ない日常のシーンやお互いの仕事風景、ちょっとだけ絡み合った人間関係など程よい脱力感で気楽に読める作品ではありますが、ちょこっとずつ謎が散りばめられてもいます
その点が線になった時・・・どうなるのでしょう？