こんにちはLuck’oです
このコーナーは現蔵書3000冊弱、延べ通読冊数6000冊以上のLuck’oが読んだ作品のあらすじ紹介とレビューをしていくブログです
ひねくれものですので超メジャー作を読んでなかったり、「?」な作品を紹介したりしますがそこはご容赦くださいませwww
カテゴリは大きく分けて「連載中」「完結」「クラシック(主に2000年より前)」に分かれます
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※ご注意
このコーナーは大なり小なりのネタバレを含みます
ご自身の判断で閲覧いただくようお願いします
TheWorkData
【作品名】 |
アスペル・カノジョ |
【作者】 |
漫画・森田蓮二 原作・萩本創八 |
【連載期間】 |
2018〜2021 |
【巻数】 |
全12巻 |
【掲載誌】 |
コミックDAYS |
Story&Review&Character
この作品は発達障害「アスペルガー症候群」で周りとの差に苦しむ女性が、自分を理解してくれる男性と一歩ずつ毎日を生きていく姿を描いた漫画です
一生かけて付き合って行かなければいけない病との向き合い方や、「人と違う」事をどう受け入れ相手に受け入れてもらうのかなど普段の生活でも考えさせられるテーマが詰まっています
主人公の1人は新聞配達のアルバイトで生計を立てる男性「横井拓(よこい たく)」23歳
家賃3万円・風呂なし・共同トイレの安いだけが取り柄のアパートで暮らしています
勿論エアコンなどもなく夏暑く冬寒い自然に寄り添った環境です・・・
彼は人と接するのが苦手で学生時代は最低限の付き合いで友人関係をやり過ごし、成人した現在友人はいません
子供の頃から漫画が好きでアクションものなどを自分でも描いていましたが、中2の時に後輩が自殺したのをきっかけに作風がいじめをテーマにしたものに変わりました
決して絵は上手くありませんが(むしろ下手)、「下水星人(げすいせいじん)」のペンネームでオリジナルや二次創作のエロ同人誌を作成して少ない売上を家計の足しにしていました
そしてもう1人の主人公は「斉藤恵(さいとう めぐみ)」18歳
中学から壮絶ないじめにあっており高校は中退
原因となったのが彼女の発達障害「アスペルガー症候群」でした
そのせいで家族とも折り合いが悪く毎日死ぬことばかりを考えていた恵は、ネットで偶然見かけた「下水星人」の同人誌に共感します
作者に会いたい一心で夜行バスに乗り鳥取から東京へとやってきました
そこから物語はスタートします
自宅の住所を公開している訳でもないのにいきなり「ファン」を名乗る女性が押しかけて来る・・怖いですよね
でも相手は可愛い女の子です
取り敢えず家に上げて事情を聞き何やらやり取りに若干の違和感を感じた横井ですが、取り敢えず創作風景を見たい言う事で同人誌を描いていると・・・
「横で凝視」
既に怖いは通り越しました(笑)
時間が経っても帰る気配もなくどうやら気が済むまでこっちにいる様子です
かといって宿泊するほどのお金も持っていません
やむを得ず一晩泊めてあげると朝に彼女が行ったのは・・
「ザックリリストカット!!!!!」
もう横井は考えが追い付きません
しかも本人は大して気にするそぶりも見せません
手当をして散歩に出ると近づいて来たワンちゃんを・・・
「蹴る!!!???」
これで彼女がおかしいのは確定です(ウンウン)
元をただすと違和感の正体は彼女の発達障害「アスペルガー症候群」にある事がわかります
端的な特徴として
・コミュニケーション 及び 対人関係における障害
他人との適切なコミュニケーションを取ることが苦手、対人関係を築くことが難しい
・反復的な行動、興味・同一性へのこだわり
特定の対象への強い没頭・反復的な行動や同一性へのこだわりがあり、柔軟に対応することが難しい
というものです
このせいで家族(特に父親)には何度も酷い扱いを受け、学校ではいじめられ続けてきました
そんな時に彼女は横井がいじめをテーマに描いた「内外開拓」に感銘を受けます
こうして情緒が不安定な恵を受け入れた横井でしたが、発達障害と向き合うというのは想像を絶する大変さでした
まず怒ってはいけません
彼女はなぜ自分の行動で相手が怒っているのか理解していません
丁寧に1個ずつ紐解くように説明して理解させ行動を改善していかなければならないのです
それが1個や2個じゃ収まりません
日常生活で事ある毎にそれを繰り返します
とても根気がいる作業です
逆にそれ以外は健常者となんら変わらない事も時に横井の判断を悩ませます
判断を誤れば彼女は大きく落ち込み取り乱し時には死を意識します
そんな神経が磨り減る作業を繰り返しながら横井は自分の日常もこなしていかなければなりません
残念ながら彼には簡単に恵を養えるだけの稼ぎも蓄えもないのです
そして恵の情緒は朝夜関係なく乱れます
時には新聞配達の最中に家に帰ったり、バイトを急に休ませてもらう時もありました
しかし彼は恵と向き合う事を投げ出しませんでした
横井に見捨てられた彼女の行く先は決まっているのです→「樹海」
そういった切迫した理由もありますが、横井は人と接するのが苦手なぶん相手を観察する力に長けていました
行動で思考を想像できる事は横井と恵の大きな助けになります
こんな歪で危うい2人に関わる周りのキャラも色濃いです(笑)
バイトの先輩「相馬(そうま)」は心身健康な人格者で立場の弱い横井をいつも助けてくれますが女性関係にだらしないのと恵が生理的に嫌っているのが玉にキズ
夕刊のバイト「清水(しみず)」は恵と同じ発達障害がありながら結婚し子供もいる貴重な人物で、その夫「浩介(こうすけ)」共々症状や社会との向き合い方を教えてくれます
隣に越してきた「高松(たかまつ)」は男性への依存症で男に抱かれていないと精神が不安定になってしまいます
上手い距離感を保とうとする横井に時には辛辣な言葉を浴びせてきます
アパートの大家は大雑把な性格で助かる反面、無駄に距離を詰めてきて世話を焼きたがる横井にはありがたくないタイプの人種です
人と接するのが苦手な横井でしたが、周囲の人と何とかバランスを取りながら大変な日常をやり過ごします
大きな転機は父親が肝硬変で入院し余命いくばくもないと知らされた時でした
彼女は父親を恨んでおり彼の死を望んでいましたが、母親の要望で米子に帰ると力ない姿の父にそれ以上の怒りは湧いてきませんでした
偶然いじめの張本人「池上綾乃(いけがみ あやの)」に会った恵は横井を馬鹿にされいきなり殴りかかり訴訟問題へと発展します
そこで浩介の知恵を借りた横井が取った行動は「いじめに対する訴訟返し」で、綾乃を始めいじめに関わった人間と向き合って行く事になります
かといってこれがいじめ問題が雪解けを迎える・・なんて良い話ではなく、どこまで行っても加害者と被害者は平行線だし落し所はないという現実を見せられます
そして神経をすり減らしてきた代償が横井にも訪れます
免疫力が低下し血尿を出すと、これまでギリギリの所で保っていた気持ちが一瞬切れてしまいます
彼の変化を察した恵は「捨てられる」と大騒ぎした後、少しでも力になりたいとアルバイトを始めます
清水のアドバイスで棚卸のアルバイトに就いた恵は、下心ある中年男性「赤川(あかがわ)」の手厚いサポートで仕事に慣れ横井に稼ぎをもたらします
恵の自立を喜ぶ半面、自分の元からいなくなるのではという複雑な気持ちの横井でしたがその後も自分の体調や米子での裁判、恵の父の死による家族間の諍いを共に乗り越えていきます
でもこの道にゴールはありません
大事なのは今日を乗り越えて明日に繋ぐ事です
無理に解決せず持ち越せる事は明日に持ち越します
そうしてひとつずつを繰り返した先に未来があるのと信じて・・
【締めの感想】
病気に限らずこの作品は人や社会、過去と未来、現実と理想など色々な事への向き合い方を教えてくれる作品です
正直一気読みしてもなんの爽快感もありません・・というか凹みます(汗)
でも相手を思いやって受け入れる事の大切さは拙速な自分達の生活に異を唱えられている気すらします
これを読むと今一度自分の生き方を振り返ってみたいと思わせられます
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