第69回 くずしろ「雨夜の月」を読む!

雨夜の月07 ヒューマンドラマ
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こんにちは
湖面をたゆたう漫画好きLuckoです

このブログではいい年した漫画好き(汗)の私が、これまでの漫画遍歴で好きだった漫画や作家さんの作品を中心にあらすじやキャラクターを簡単に紹介しつつレビューしていきます

完全に個人の独断と偏見ですのでその辺はご容赦ください

あとネタバレも含みますので注意してくださいね

今回ご紹介するのはくずしろ「雨夜の月です

この作品は表紙を見て気になったパターンですね
絵も綺麗だし最初はもっとドロドロした展開になるのかと思いましたが、思いの外明るい学生生活を描いているのでちょっと安心しています(笑)
百合がベースになっていますがヒロイン奏音の難聴も含め色々なマイノリティも絡んで来る考えさせられる作品となっています

ちなみに辞書では
「あまよ‐の‐つき【雨夜の月】
雨雲に隠れた月。想像するだけで目には見えないもののたとえ」

だそうです

作品概要

【作品名】
 雨夜の月 
【作者】
くずしろ
【連載期間】
 2021〜 
【巻数】
既刊7巻
(2024.7現在)
【掲載誌】
コミックDAYS

作品紹介

■ジャンル

この作品のジャンルは「百合」「学園」です
といっても露骨な百合シーンなんかはなく今の所淡い想いの寄せ合いになっています

どちらかと言うと学園生活や主人公の1人が持つ「難聴」による障害にフォーカスが当てられています
それもあってかなり精神的にキツいシーンとかも出てくるかな?と不安視していましたが、ハートフルな人間ドラマや友情の方が多めの暖かい作品なので安心して見てください(今の所・・・)

■メインキャラクター

「金田一咲希(きんだいち さき)」
高校1年生、・・・じっちゃんは違う人です(当たり前)・・しかしなぜに金田一・・・しかも誰もそこは突っ込まないのね(笑)
特筆する技能もないごく普通の女子高に通う高校生

「及川奏音(おいかわ かのん)」
咲希のクラスメイト、難聴で耳が聞こえにくい為健常者と壁を作っている、両親は音楽関係者

「及川凛音(おいかわ りんね)」
奏音の妹、姉の障害を知って近づく人間を嫌悪している

■ここまでのあらすじ

咲希はこれまで通っていたピアノ教室の先生が結婚すると聞きショックを受けます
男性の気配など全く匂わせていなかった上に、咲希は先生(女性)に淡い恋心を抱いていたのです
失恋のショックが冷めやらない内に高校入学を迎えた咲希は、ドストライクな美少女・奏音と出会いクラスメイト(席も隣)になります



しかし奏音は難聴で相手の話が聞こえにくく健常者と壁を作って避けていました
その壁を乗り越えず潜り抜けた咲希は奏音と友達になります



奏音の母親はピアノ教室を経営しており前の教室から引き継ぐ形で咲希も通い始めますが、妹の凛音には障害をダシに近付く偽善者扱いを受けてしまいます
同じように奏音と中学時代を過ごした「綾乃(あやの)」にも障害者と付き合っていく難しさを聞かされますが、咲希はそれを苦にすることなく奏音の全てと向き合って行きます



学校生活ではハンディキャップを持つ奏音と周囲との温度差を上手く緩和する立ち回りを行い、私生活でもお互いの家に行ったりお泊り会をしたりと咲希と奏音は友情を育んで行きます

■難しいテーマ「難聴」

やはりこの作品の一番センシティブな部分は奏音のハンディキャップである難聴でしょう
用語として知っていてもなかなか周囲にいる訳ではないし、ましてや高校生ぐらいとなると余計に当事者として関わる機会は少ないでしょうね



実際高校入学当日に担任の「関口聡子(せきぐち さとこ)」はクラスメイトの前で堂々と「及川さんは実は耳が不自由です」と宣言します
奏音自身は既に周りと壁を作っているのであまりダメージはありませんが、この関口と言う教師は障害に無関心な健常者の代表格のように配慮に欠けた言動や行動を繰り返します
・・・うっかりさんなキャラに仕上がってますが我々もこうでないとは言い切れませんね



逆に現国教師の「三浦(みうら)」は「平等」と「公平」をきちんと分けて奏音に接してくれます
彼は物事の分別を理性的に説いてくれる理想的な大人なのですが、妻を亡くし幼い娘を育てる難しさに苦悩するひとりの父でもあります



妹の凛音が障害者への介助を自己満足に置き換えて考える人間を厳しく指摘しますが、介護も含めてハンディキャップへの向き合い方(寄り添い方?)って難しいですよね~



クラスメイトでカースト上位の「富田(とみた)」はなにかと奏音を目の敵にし、「合唱コンクール」で難聴の奏音を指揮者に推挙します
もう悪い事考えてるのが手に取るようにわかりますが、夏休みを前にまさかの右耳完全失聴の突発性難聴になり「健常者→障害者」というショッキング(本人)な状況に陥ります
なかなかに盛大なブーメランです・・・



中学時代に奏音の親友で彼女の世話を引き受けていた綾乃も親に弟達の世話を「義務」として押し付けられ学校と家庭でストレスの板挟みになり奏音かな離れた過去を持っています
このように「難聴」ひとつだけではなくそれぞれの「生活」の中で他人の障害と向き合うと言う事がいかに難しいかを思い知らされます

■意外に咲希は頼もしい?

序盤で女性への恋心を持ち奏音と仲良くなることに少し後ろめたさを持っていた咲希ですが、その積極的な行動は周囲を巻き込んで前向きな矢印を作ってくれています
咲希がいなければクラスメイトの「田辺(たなべ)&村中(むらなか)」は奏音に興味を持ちながらも友達になる事はなかったし、奏音が明るい学生生活を送る事で彼女の障害に責任を感じていたオーケストラ指揮者である奏音の父「大鳴(ひろなり)」と母でピアニストの「響(ひびき)」そして妹の凛音も微妙な溝を持ったままだったでしょう



奏音を虐める気満々だった富田や愛情を通り越して奏音に嫌悪感を抱いていた綾乃が障害や奏音と向き合い直せたのも咲希あっての事です
本人は百合よりな考えを下心と思い後ろめたい時もあるようですが、上辺だけの親切心ならここまで周りの人は動いてくれないですよね

■百合は進展するのか?

咲希の活躍(?)で学校生活にすっかり溶け込んだ奏音も咲希の存在を大きく感じており彼女の事をもっと知って向き合おうとします
これは百合フラグに進展ありか?



更に姉を守る任務から解放された凛音は転校生の「千山沙羅(ちやま さら)」が抱える「掌手多汗症」を知り、最初こそ関わらないようにしていましたが結局相談に乗り友達になってしまいます
この子・・・面倒見がいいな(笑)
こっちは百合というより女子の友情メインですが今の所恋愛事情に男が全く出て来ません(あ、舞台が女子校だからか)



序盤で知り合い困った咲希にアドバイスをくれる美容師の「高倉明(たかくら あきら)」も女子校で恋愛事情を経験しその難しさを知りながらも咲希の背中を押してくれます
咲希と奏音以外の組み合わせって言う事はありえなさそうですが、このまま「友情」なのか?もう少し進んで「愛情」まで行くのか?
今後の動向も気になる所です



ちょっと明が言った「成就した恋だけが正しい訳でもない」ってのが気になりますね
今やってる文化祭イベントが終了したらもう年末→卒業って流ですからね~

luck’o
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