第46回 うめ「大東京トイボックス」を読む!

大東京トイボックス01 職業・ビジネス
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こんにちは
湖面をたゆたう漫画好きLuckoです

このブログではいい年した漫画好き(汗)の私が、これまでの漫画遍歴で好きだった漫画や作家さんの作品を中心にあらすじやキャラクターを簡単に紹介しつつレビューしていきます

完全に個人の独断と偏見ですのでその辺はご容赦ください

あとネタバレも含みますので注意してくださいね

今回ご紹介するのはうめ「大東京トイボックスです

この作品はタイトルのまんま東京トイボックスの続編です
前作もゲームの中身より作る人のコアな人間模様が描かれていましたが、今回は更にゲームにまつわる世知辛い社会問題なんかも付いてきます
とかく漫画やゲームというのは70年代以降急速に成長して来た分野だけに接している具合によって必要・不必要がはっきりと分かれてしまうジャンルなのは否めません
そんな難しい問題に切り込んだ今作でゲームに対する正しい答えは見つかるのか⁉お楽しみに!

作品概要

【作品名】
 大東京トイボックス 
【作者】
うめ
(小沢高広・妹尾朝子)
【連載期間】
 2006〜2013 
【巻数】
全10巻
【掲載誌】
月刊コミックバーズ

作品紹介

■その後のG3

大東京トイボックスは前回から2年後を描いています
変わった点と時代閉経的には

・月山が社長に就任
・グラフィッカーで太陽と一緒にソリダスを辞めてG3を作った「谷崎七海(たにざき ななみ・36)」がソリダスに復帰し「サムライ・キッチン2」を担当
・次世代機(PS3)やニンテンドーDSが台頭していた時代

です
よかったら東京トイボックスもどうぞ

■G3に新人投入!

まずはのっけから新キャラが登場です
大阪生まれでゲーム業界を夢見る女の子「百田モモ(ももた もも・24)」は太陽の勘違いでスタジオG3に試験採用されます
志望は企画ですが大した企画力がなく現実的に武器は「夢と希望」だけです
もちろんいくら場末の制作会社とはいえその程度で通用するはずもなく一度は仕事から逃げてしまいます
しかし彼女が擦り切れる程プレーして人生を支えてくれたゲーム「ソードクロニクル3」のディレクターが太陽だと知りもう一度夢だった業界にしがみつこうとします
今度は「努力と根性」も携えて・・・大丈夫か?

■ラスボスはジーク⁉

前作では太陽のライバルである仙水が敵役でしたが、今回はソリダスユーロから刺客がやってきます
その名も「卜部(うらべ)・ジークフリートアデナウアー」

皆さんはどんなイメージを持ちますか?
そう!
角刈りで細身の日本風中年オッサンです(ズコー!!)
序盤は品証部顧問として赴任して来ますが、執行調査部を起ち上げレーティングやあらゆる審査に顔を出してきます
でも前半はおとなし目ですね

■新ハードで新ゲーム⁉

地に足を付けた経営と開発を目指していたG3の状況を一変させたのは勿論「ソリダス」でありAM2局局長の仙水です
彼は「SOUP(ソリダスワークスオープンユニバーサルプログラム)」という次世代向けの開発方式を提唱します
要するにソリダスと一緒に出資する事で膨大な次世代機ゲーム開発の予算リスクを減らして、有用な中小開発メーカーを引き込もうという算段です



奇しくもこの時ゲームの悪影響によって少年犯罪が頻発するという社会問題もゲーム開発には向かい風となっていました
誰もがリスクを避けたいからみんなで危ない橋を渡りましょう!って事ですね(笑)



ここでパブリッシャーの須田はスタジオG3に次世代機での開発を行うよう促して来ます
勿論月山は断ろうとします(そりゃそうでしょう)
でもG3は元来ゲーム制作会社なんです
結局その情熱に月山は折れるのですが、これが失敗の始まりでした(チーン)

■漂う暗雲

まず須田が渡りをつけた共同開発会社の「電算花組」
同人ゲームサークル「九龍黒パンダ団」が母体となったこの会社の売りは「萌え」
ある意味G3には門外漢の分野です
しかも社長の「半田花子(はんだ はなこ)」は若くして成功を収めたイケイケの経営者・・どう見ても太陽とは水と油・・(失敗その①)



開発の主導は電算花組で太陽も三下り半を下されますが、起死回生で出した企画は何と「シューティングゲーム」
20世紀の遺物と言っても過言ではありません(汗)
しかもプログラムを買って出た「金田正志(かねだ まさし)」は勝手にシューティングと相性最悪の「SWE(ソリダスワークスエンジン)」の試用版で組んだ上に頓挫して音信不通(チーン&失敗その②)



一次審査をパスして二次審査の「プリプロ(制作期間や予算を明確にし実装出来るレベルのデモプレイを用意するイベント)」で完璧な音声付動画を用意して来た電算花組に対しG3が提出したのは・・・・・・・・・「静止画」
半田にはブチ切れられ仙水にはお情けで審査を通過させられる屈辱を味わいます(失敗その③)



挙句の果てには太陽まで絶好調に見える暴走モードに入ってしまいます(失敗その④)
これを受けた月山はプログラムチーフの「依田敦史(よだ あつし)」と水面下である作戦を進めていました

■G3分裂危機⁉

案の定太陽は月山が北米のE3に行っている間に勝手にゲームの仕様を変更します・・がこれに関しては月山の方が一歩上手で三次審査の「α審査」を乗り切ります



その代償は大きく月山は太陽の信頼を失ってしまいます
しかも月山が会社の為に太陽を裏切る事まで仙水の思惑通りとくれば後はG3の空中分解も待ったなし!
の状況に動いたのはここまであまり役に立っていなかったモモでした
誰よりも純粋にゲームへの情熱を持つ彼女は妥協したαを良しとせずG3スタッフ全員の家を周り面白いゲーム作りへの理解を求める事で太陽の背中を押します



ただ一人チームの輪から取り残された月山を除いて・・・

■デスハイ完成?

まずゲーム制作パートですがG3はソリダスや須田の意向を無視した太陽を中心にして「本当に面白いデスハイ」制作に乗り出します
ここまで太陽のマウントを取って来た半田も自社パートがソリダスチェックに引っかかり大企業の圧に屈しそうになりますが、最後は太陽の熱意に押されG3案に合流します
しか~しそんな勝手を見逃してくれるソリダスではありません
なんと過去に出たシューティングゲームをデスハイに寄せて焼き直し発売日を同じ日にぶつけてきます
・・今回の敵は中々に陰湿さが徹底してます(笑)



苦肉の策で発売日を前倒しすると山の様に重なって来る仕事、そして疲労・・
遂にプログラムチーフの依田がダウンしてしまい万事休す⁉
これを聞きつけて現れたのは仕事に行き詰まり大阪まで逃げていた金田でした
今度は出来ない仕事を人のせいにせず自分としっかり向き合ってG3のピンチを救ってくれます
・・まぁ、元はと言えば彼が作ったピンチでもありますけどね(笑)



スタジオG3、電算花組と須田のMMGが腹を括って作り上げた「完成版」を手に太陽は単身ソリダスに乗り込みます
これで「ゲームパート」「金田パート」は回収です

■卜部の正体

そして一番厄介な「卜部ルート」に行きましょう!
まず卜部は「ソリダスチェック」に続き国会で審議中の児童ポルノ法改正案にゲームが入らないように新レーティング機構「テミス」を立ち上げます
更にその審査能力を使い電子教科書など教育分野に進出する新プロジェクト「EGGS(エッグス)」を使い業界の新基準を掌握しようと国に持ち掛けます
ソリダス内部では仙水を擁護する御堂に反感を持つ幹部を焚き付け「解任動議」を発動・・御堂はその立場を追われてしまいます
もうゲーム漫画の枠組みを大きく超えてきました(汗)
そしてソリダスにやって来た太陽と直接対決に臨みます

仙水inドイツ

ここまで暗躍する卜部とは何者なのか?そしてその目的は?
それはここまでハブられていた(⁉)仙水が解決の糸口を見つけてくれます
彼は社内で仙水排斥の機運が高まるとこっそりドイツに飛んで卜部の足跡を追っていましたが、とんでもない事実を知ってしまいます

卜部は数年前にドイツの学校で起きた生徒による銃乱射事件の関係者だったのです
原因となったのは海外版の「ソードクロニクル」
最初は「被害者の親」として未熟な子供を扇動するゲームに物申したい・・というスタンスかと思ったら実は違う立場だったんですね
これがまた闇深かった

そんな彼が太陽にある問いを投げかけます
「自分が作ったゲームで人が死んだらどう責任を取る?」



さすがにこれは太陽も悩みました
人の命が懸かってますからね
でもその悩みに答えをくれたのはソードに救われた人物・・そう!モモでした



「ソードクロニクル」の奇縁によって巡り合わせた太陽と卜部
果たして太陽はどんな答えを出すのでしょうか?



ゲーム制作の苦悩や悲哀だけでなく法律などによる縛りやレーティングなどあまり買う側が知ることはないけれどとても大切な問題をテーマにしたかなり複雑なストーリーとなっています
それに絡めて太陽と仙水の幼少期からの過去話やソリダス時代のエピソード、2人の恩師である「桜庭甚平(さくらば じんべえ)」を交えたG3起ち上げ秘話などどの角度から切り取ってもおいしい作りとなっています
そのスケールで考えたら序盤で混乱をもたらしたモモや金田なんてかわいいもんです(笑)



実際見比べてみるとドラマ版のキャストって結構悪くないんですよね
予算の都合でG3のメンバーが半分以下になってたのが痛かったかな~
「大東京」パートなんて原作同様に作ったら映画化でもいいくらいだったと思うのは僕だけでしょうか?



あと月山&太陽パートは不仲な間もイチャついていたみたいで納得いかないハッピーエンドでした(笑)
臭いヒゲジャージのどこが良かったんだか・・

やはりチームで力を合わせて何かを作るっていうのは素晴らしい事だと思わされますが、そこに予算や大人の事情が乗っかった時にモノづくりの信念っていうのが浮き彫りにされてきますね
従うのか?折れるのか?それともつき通すのか?
最終的の太陽は超カッコよかったです!!

物語は間接的ながら次の東京トイボクシーズへと続いて行きます
これにて「大東京トイボックス」読了です!

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